久しぶりに韓国小説を紹介します^^
韓国で一番 好きな文学家であるパク·ワンソさん。
私が感じる「韓国らしさ」をとてもよく表している作家さんです。
1931年生まれで少し前の時代ではあるのですが、古くない文体で、
とても読みやすい文章のため、普通の現代小説として読むことができます。
この方は2011年に故人となりましたが、その後も小説全集が発刊され、
それがほとんどの図書館に置いてあるという、人気ある作家さんです。
著者の小説はどれを読んでも面白いのですが、
とりわけ
「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」と
「あの山は本当にそこにあったのか」は
ほぼ自伝となっており、非常に興味深い内容となっています。
著者も、ほぼ体験談ではあるけれど、記憶が曖昧な部分があるため
そういうところを多少のフィクションで繋ぎ合わせたため小説としてあると語っています。
幼少時代を描いた「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」に続き
「あの山は本当にそこにあったのか」は著者の20代、朝鮮戦争のさなかから始まっています。
朝鮮戦争を実際に経験して、個人の視点から小説に書き上げた作家はほぼいないため
ある意味文化財のような本だとも思います。
------------------------------------------------------------------------------
<本のあらすじ(ネタばれ)>
朝鮮戦争が始まり、人民共和軍が(北朝鮮勢)38度線を越えて攻めてきた。
ほとんどの人は南下して逃れ、ソウルにはほぼ人が残っていない。
いるとしたら逃げ遅れた人か、左派に傾倒している人たちである。
そんな中でパク·ワンソの兄は負傷を追っているためパク·ワンソ家族はソウルに残されている。
国軍の支配下では人民共和軍に加担した人は処刑されたが、
人民共和軍が占領した現在は国軍側であることが不利な状況。
そして何より食べるものがない。
パク·ワンソ家族は誰もいなくなったソウルの家から食べ物を盗みながら生き延びる。
ソウルが国軍の指揮下にあるのか、人民共和軍の指揮下にあるのか分からないため、誰も信じられない状態。
そして、人民共和軍が支配している状態であることを知り、パク·ワンソは取り合えず左派につくことにして人民共和軍の元で働き始める。
その後、人民共和軍が後退する危機となり、パク·ワンソらは北朝鮮に避難せよと通達が来る。兄は歩けないため、老母と兄を残してパク·ワンソと義姉は北朝鮮に向かう。
北側に行くか、南に残るかで一生が決まるという絶体絶命のピンチの中、2人はわざとゆっくり歩いて北朝鮮に向かう。そして、ギリギリ北に入る直前に、国軍が韓国を奪還し、2人はソウルの家族の元へ帰れることになった。
家族が再開したのも束の間、また人民共和軍が攻めてくるとの通達があり、今度は国軍から南へ避難せよと言われる。今度は国軍側で働いていたパク·ワンソは家族とは別に南へ避難することに。
結局、国軍が死守して人民共和軍は攻めてこなかったため、パク·ワンソ家族はまたもやソウルへ戻って再会。その後、足が悪かった兄は亡くなる。
知り合いの紹介でパク·ワンソは米軍のショッピングセンター(PX)で働くことになる。
そして夫と知り合い、結婚するに至る。
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たった数年間の怒涛のような出来事ですが、
朝鮮戦争の物凄さ、それに巻き込まれた人々の生活が分かります。
理念の問題というより、どちらに付けば生き延びられるのか、
その切迫感が描かれています。
そして、その後のソウルの様子や、米軍の存在、物資の少なさ、
再建の様子などが詳しく伝わってきます。
1950年の出来事ですから、今から70年前の話です。
歴史として学ぶと頭に入ってこないのですが、
自伝として読むと印象がガラリと変わります。
そして、それらを経験する中で著者がどんなことを考えたのか、
その思考がしっかりと書かれています。
時に自分勝手で、軽薄にすら感じる、その率直な考えが
とても人間らしく、身近に感じられ、つい読みながら笑ってしまった部分も多々ありました。
一般的な小説を読んでいると、主人公が自己完結するような思考であることが多いのですが、
自伝小説には完結していない人間らしさというものがあります。
これは空想ではなかなか描けないし、自伝小説の一番の面白みだと思います。
これらの内容を文にして、人々の共感を得る作家はなかなかいないでしょう。
日本語にも翻訳されたものがあるので、
是非、機会があれば読んでみてほしい一冊です!!
p.s.
パク·ワンソが結婚前に付き合っていた男性の話も少し出てきますが、
彼についても「あの男の家」という自伝小説を書いています。
「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」
「あの山は本当にそこにあったのか」
「あの男の家」
この3つがパク·ワンソの3大自伝小説と言えるでしょう。
個人的には「あの男の家」もとても大好きなので、日本語の翻訳版が出ることを願ってます。
ではまた。
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韓国で一番 好きな文学家であるパク·ワンソさん。
私が感じる「韓国らしさ」をとてもよく表している作家さんです。
1931年生まれで少し前の時代ではあるのですが、古くない文体で、
とても読みやすい文章のため、普通の現代小説として読むことができます。
この方は2011年に故人となりましたが、その後も小説全集が発刊され、
それがほとんどの図書館に置いてあるという、人気ある作家さんです。
著者の小説はどれを読んでも面白いのですが、
とりわけ
「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」と
「あの山は本当にそこにあったのか」は
ほぼ自伝となっており、非常に興味深い内容となっています。
著者も、ほぼ体験談ではあるけれど、記憶が曖昧な部分があるため
そういうところを多少のフィクションで繋ぎ合わせたため小説としてあると語っています。
幼少時代を描いた「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」に続き
「あの山は本当にそこにあったのか」は著者の20代、朝鮮戦争のさなかから始まっています。
朝鮮戦争を実際に経験して、個人の視点から小説に書き上げた作家はほぼいないため
ある意味文化財のような本だとも思います。
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<本のあらすじ(ネタばれ)>
朝鮮戦争が始まり、人民共和軍が(北朝鮮勢)38度線を越えて攻めてきた。
ほとんどの人は南下して逃れ、ソウルにはほぼ人が残っていない。
いるとしたら逃げ遅れた人か、左派に傾倒している人たちである。
そんな中でパク·ワンソの兄は負傷を追っているためパク·ワンソ家族はソウルに残されている。
国軍の支配下では人民共和軍に加担した人は処刑されたが、
人民共和軍が占領した現在は国軍側であることが不利な状況。
そして何より食べるものがない。
パク·ワンソ家族は誰もいなくなったソウルの家から食べ物を盗みながら生き延びる。
ソウルが国軍の指揮下にあるのか、人民共和軍の指揮下にあるのか分からないため、誰も信じられない状態。
そして、人民共和軍が支配している状態であることを知り、パク·ワンソは取り合えず左派につくことにして人民共和軍の元で働き始める。
その後、人民共和軍が後退する危機となり、パク·ワンソらは北朝鮮に避難せよと通達が来る。兄は歩けないため、老母と兄を残してパク·ワンソと義姉は北朝鮮に向かう。
北側に行くか、南に残るかで一生が決まるという絶体絶命のピンチの中、2人はわざとゆっくり歩いて北朝鮮に向かう。そして、ギリギリ北に入る直前に、国軍が韓国を奪還し、2人はソウルの家族の元へ帰れることになった。
家族が再開したのも束の間、また人民共和軍が攻めてくるとの通達があり、今度は国軍から南へ避難せよと言われる。今度は国軍側で働いていたパク·ワンソは家族とは別に南へ避難することに。
結局、国軍が死守して人民共和軍は攻めてこなかったため、パク·ワンソ家族はまたもやソウルへ戻って再会。その後、足が悪かった兄は亡くなる。
知り合いの紹介でパク·ワンソは米軍のショッピングセンター(PX)で働くことになる。
そして夫と知り合い、結婚するに至る。
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たった数年間の怒涛のような出来事ですが、
朝鮮戦争の物凄さ、それに巻き込まれた人々の生活が分かります。
理念の問題というより、どちらに付けば生き延びられるのか、
その切迫感が描かれています。
そして、その後のソウルの様子や、米軍の存在、物資の少なさ、
再建の様子などが詳しく伝わってきます。
1950年の出来事ですから、今から70年前の話です。
歴史として学ぶと頭に入ってこないのですが、
自伝として読むと印象がガラリと変わります。
そして、それらを経験する中で著者がどんなことを考えたのか、
その思考がしっかりと書かれています。
時に自分勝手で、軽薄にすら感じる、その率直な考えが
とても人間らしく、身近に感じられ、つい読みながら笑ってしまった部分も多々ありました。
一般的な小説を読んでいると、主人公が自己完結するような思考であることが多いのですが、
自伝小説には完結していない人間らしさというものがあります。
これは空想ではなかなか描けないし、自伝小説の一番の面白みだと思います。
これらの内容を文にして、人々の共感を得る作家はなかなかいないでしょう。
日本語にも翻訳されたものがあるので、
是非、機会があれば読んでみてほしい一冊です!!
p.s.
パク·ワンソが結婚前に付き合っていた男性の話も少し出てきますが、
彼についても「あの男の家」という自伝小説を書いています。
「あんなにあった酸葉を誰が食べたのか」
「あの山は本当にそこにあったのか」
「あの男の家」
この3つがパク·ワンソの3大自伝小説と言えるでしょう。
個人的には「あの男の家」もとても大好きなので、日本語の翻訳版が出ることを願ってます。
ではまた。
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